アンチョビな人生

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ルイの9番目の人生を観て(ネタバレあり感想)

ルイの9番目の人生という映画を観ました。

 

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【あらすじ】

ひどい難産の末にこの世に生を受けたルイは、奇妙なことにそれから毎年、8度にわたって生死に関わる大事故を経験していた。そして美しい母親ナタリー(サラ・ガドン)、別居中の父親ピーター(アーロン・ポール)に9歳の誕生日を祝ってもらうためのピクニックで渓谷を訪れ、9度目の悲劇に見舞われてしまったのだ。

 

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9歳の男の子が生まれてから今まで、数奇な運命を辿って奇跡的に生きている話 と勝手に解釈して観始めました。

 

内容は明るくて、少し笑えるようなハートフルストーリーだと勘違いして観始めたら、思いのほか重い内容で驚きました。

 

ルイの9番目の人生の感想(ネタバレあり)

結論から言って、とても面白かったです。

 

見事に勘違いして観始めたので、途中「失敗したぜ〜」と思ったのですが、それでも続きが気になって目が離せませんでした。

 

そして、見事にラストは号泣しました。

 

号泣したのですが、単純に感動だけじゃなく「人間って本当に怖い生き物だな」と思って恐怖からもちょっと泣きました。

 

女性なら、序盤〜中盤で母親の異常性に気づけるはず

まず、なぜルイは死んでしまったのか

父親はどこへ行ったのか

やはり父親がルイを殺したのか。

 

父親がルイを虐待しているよう思わせる方向で作っているんでしょうけど、きっと女性なら母親が異常だと 何となく察しがつくんじゃないかと思います。

 

映画の序盤、母親はルイを献身的に守っている描写が多々出てきます。

 

ルイは頭がよすぎるゆえに、人とは少し違う節があります。

 

そのためにセラピーに通わせ、ルイを大切に守っているかのように見せてきます。

 

私も最初は、少し過保護だけど弱いながらも頑張っているいい母親ね という視点で見ていました。

 

それに、ルイが父親の秘密を母親にバラしたことで ルイは父親に殺されたんじゃないか?とも考えました。

 

でもその後、母親がパスカル先生に対して「女」を見せていることがすごく引っかかったのです。

 

パスカル先生とは、ルイの入院中の主治医です。

 

違和感を感じたのは、パスカル先生と仲のいい医者のホームパーティでの2人の接触でした。

 

既婚者であることに気づいていながら、わざわざ2人っきりになれるタイミングを見計らって声をかける。

 

このシーンを見た時「あ、この女やばいな」と本能的に思いました。

 

そして、既婚者と知りながらパスカル先生とキス。

 

その後もパスカル先生に「私は18で今の旦那と出会ったから、他の男性を知らない。比較対象がいないの」という発言。

 

いやいやいや、どう見たって嘘だよね。

そもそもホームパーティで男に囲まれてたよね。そう思いました。

 

そして案の定ルイの父親は現在の父ではなく、別の男との間に出来た子供ときたもんですよ。

 

パスカル先生はその事実を知って問い詰めると「あれは最悪の出来事よ!男にはひどい目にあわされてばっかり」なんて男のせいにして同情を引く。

 

完全にメンヘラ女だと気づけると思います。

 

母親がメンヘラだと気付いたら、あとはもう簡単。

 

どう考えたって父親はルイを殺してない、そういう確信が自分の中に生まれます。

 

でも、母親がルイを殺したのなら父親はなんで現在行方不明?

母親に殺されたんだろう、という答えにたどり着くので中盤あたりでは何となく結末が想像できました。

 

ある程度は予測できても、母親があそこまで異常なことは想像できなかった

 

ルイが死んだのは両親の喧嘩が原因でした。

だから、母親がルイを殺したのは事故だったんじゃないか?と思っていたんです。

 

取っ組み合いの喧嘩になって、運悪くルイを殺してしまった。

 

そう思っていたんです。

母親は本当にルイを愛していた、だから意図的にルイを傷つけるなんてことはないだろう と本気で思っていました。

 

いくらメンヘラで男に寄生して生きているような女でも、あんなに大切に思っている息子を殺しはしないだろう。

 

事故の結果、運悪くルイは死んでしまった。

こうなったら父親も一緒に死んでしまえ〜程度で殺したもんだとおもいこんでたんです。

 

でも、どんどん解かれていく謎によってそれは全く違うということに気づきました。

 

今まで毎年起こっていた事故が、全て母親の仕組んだことというのは全く予想外でした。

 

これは本当に心からショックでしたね。

あんなにも大切だと思わせていた息子を、小さな赤ん坊の時から殺そうとするなんて本気で信じられませんでした。

 

そして、父親もそれに気付いていたということに涙が溢れました。

 

父親の愛情の深さによって全てが救われた

ルイが昏睡状態の時、いつも気持ちの悪い化け物がそばにいました。

 

最初はルイの創造が生み出した化け物だと思っていたんです。

 

でも、パスカル先生はある日悪夢を見たのです。

 

ルイの病室からとある部屋まで、何かとても汚いものが通った跡が続いていました。

 

パスカル先生はそれの跡を追いかけます。

 

その跡が最初は何かわからなかったのですが、よくよく見ると海藻や小さなカニのような生物がいることに気づきます。

 

この時点で、「もしかして父親なのか?」と思いました。

 

でも、実際は化け物でした。

化け物を見た瞬間、パスカル先生は目をさまします。

 

その化け物は、ルイが昏睡状態の時いつもそばにいる化け物でした。

 

なんとなく、父親は死んだんじゃないだろうか という予想がこの時生まれました。

 

そして後々父親だと分かるのですが、この人は本当にルイを心から愛していたんだな と思えて感動しました。

 

そしてルイも、父親を本当に愛していたんだと知ることができます。

 

ルイはいつも母親を同情していました。

でも父親に対しては愛情を持っていました。

 

母親にも愛情があるからこそ同情が生まれたのでしょう。

でも、父親に対しては純粋な愛情だけでした。

 

なんで、この子は父親と一緒にいれないんだろう

父親さえ生きていれば、この子はもっと幸せになれただろう

 

そう思うと胸が苦しく、涙が溢れてきました。

 

最後のシーンはとても美しく、そしてとても感動的だった

 

父親は、ルイを本気で守ろうとしていました。

 

ルイが死んだ原因となった喧嘩も、実は母親がルイを傷つけようとしたことに気づいたことで起こった喧嘩でした。

 

父親は、どんな時もルイのそばにいてルイを本気で守ろうとしていました。

 

でもやはり女はいろんな意味で強い。

 

女が弱い顔を見せれば、当然周りは女に同情します。

 

男よりも弱い女 という固定概念がそうさせているんですね。

それにプラスでメンヘラは、人に同情させるのが本当にうまい。

 

女は大体気づくんですけど、多分男性は強いゆえに守りたいという気持ちが生まれるからどうしても騙されてしまう。

 

だからルイのそばにいて守りたいけど、守ることができなかった。

 

なので父親はルイと離れ離れになる前にこんな言葉を残します。

 

いつも一緒だ

いつもな

ここにいる

心の中に

たとえ姿が見えなくても

いつでも話せる

愛してるよ

ルイはこの言葉を生きる糧にしていました。

 

そして、この言葉の通り 昏睡状態の時はずっと 父親はルイのそばにいてくれたのです。

 

ルイが昏睡状態から目覚めるかどうかの選択をする時、父親はルイにこんな言葉を伝えます。

お前が望むなら

目を覚まして生きてもいいんだよ

未来に興味があれば戻ればいい

世界を想像してごらん、ルイ

あらゆる不思議を

あらゆる可能性を

 

そして、ルイは目を覚まします。

 

この父親との一連の流れは本当に涙が溢れました。

こんなにも心から子供を愛し、守る親の素晴らしさ。

 

ルイには生きてほしい、幸せであってほしい

そういう無償の愛情の存在の美しさを、改めて教えてくれるシーンだと思います。

 

ルイと父親は、お互いを心から愛し、心から大切に思っています。

どれだけ相手も愛しているか、それを伝える時二人はこんな言葉を互いに言い合います。

 

愛してるよ

家一軒よりも

町全体よりも

海の魚全部よりも

お前は大丈夫だ

約束する

お前は世界一強い子だ

 

本当に面白い映画だと思いました。

 

悲しい事件が多い中、やはり子供にとって親は守ってくれる存在であってほしいと心から思います。

 

ただ、母親は本当に怖かった。

そしてパスカル先生も優しすぎるゆえにあんな女に騙されて、落ちていくなんて可哀想ですね。

 

この映画の一番怖いシーンは、この母親とパスカル先生のラストシーンだと思います。

 

あのシーンを見た時、本気で恐怖を感じました。

 

母親は必ず同じことを繰り返すし、多分最悪パスカル先生は死ぬんだろうな…

そう思うと切なくて居た堪れないですね。

 

あそこまで人を不幸にさせることができる人間も、多分そうそういないんじゃないかと思います。

 

あと、ああいう類の女は他人のものだから欲しくなるんですよね。

 

だからルイの父親に対しても最終的に愛情が冷めている。

 

人は怖い

特に一人で生きられない人間ほど 他人を巻き込むから本当に怖い。

 

そういう恐怖も教えてくれる、そんな映画でした。